「時間がない人ほど、なぜ部屋が散らかるのか

撮影で泊まるホテルの部屋は、いつも驚くほど静かだった。物が少なく、机の上には照明とメモ帳だけ。数日過ごすだけなのに、不思議と集中できた。それに比べて、自宅に帰ったときの落ち着かなさ。物は多くないはずなのに、なぜか気が散っていた。気づいたのは、物の多さはそのまま思考の多さにつながるということだった。視界に入るたびに、「片付けないと」「あれもやらなきゃ」と小さなタスクが頭の中に生まれる。それが積み重なって、何もしていないのに疲れていた。時間がない人ほど部屋が散らかるのは、片付ける時間がないからではなく、思考の余白がないからなのかもしれない。そこで私は、収納術ではなく「選択を減らす」ことから始めた。服は組み合わせに迷わない数だけ残した。コスメも本当に使うものだけ。机の上には作業に関係ない物を置かないと決めた。すると朝の準備が驚くほど速くなった。探す時間、迷う時間、後回しにする時間が減った。部屋が整うと、時間の流れまで整っていった。モデルの仕事は荷物が多そうに見えるけれど、実際の私物はかなり少ない。持ち物が少ないと、移動も準備も軽くなる。その軽さが、そのまま時間の余裕になっていた。完璧に片付いた部屋を目指さなくていい。まずは一か所だけ、視界に入る範囲だけ整える。それだけで、頭の中のノイズは少し静かになる。時間は時計の中だけで減っているわけではなかった。視界の中でも、少しずつ削られていた。

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