スタジオのフィッティングルームで、次の衣装を待っていた。ラックに整然と並ぶ洋服を眺めながら、私服で毎朝迷っていた頃の自分を思い出していた。あの頃は、時間がないのに服の前で立ち尽くしていた。何が着たいのか分からないまま、鏡の前で何度も着替えては脱いで、結局バタバタと家を出ていた。忙しいから迷っているのだと思っていたけれど、今思えば逆だった。迷う仕組みのまま暮らしていたから、時間が消えていた。予定を減らして生活に余白ができた頃、クローゼットも一緒に見直した。基準はひとつだけ。「朝の自分が迷わないか」。色はベーシックに寄せて、組み合わせを考えなくていい服だけ残した。ハンガーも無印良品のアルミハンガーで揃えたら、視界が整って選ぶ時間が短くなった。おしゃれを頑張るのをやめたら、支度が静かになった。以前は出発前から疲れていたのに、今はコーヒーを飲む余裕がある日もある。朝の数分の違いなのに、気持ちの余裕は大きく変わった。自由な時間は、特別な工夫で生まれると思っていた。でも実際は、毎朝の小さな迷いを減らすことのほうが効いた。忙しさは予定の量だけで決まらない。選択の多さでも決まっていたのだと思う。フィッティングの呼び声がして立ち上がる。衣装は用意されている。迷わなくていい心地よさを、私はもう知ってしまっていた。
予定を減らしたら、服選びの時間まで減った話
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